ドヴォルザーク作曲交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」(以下新世界と略)が2021年3月、NHKFMのブラボーオーケストラで放送されます。
新世界から感じたこと
「新世界より」は1893年、ドヴォルザークがボヘミアからニューヨークにある国民音楽学校の校長として赴任しているときに作曲されました。
ドヴォルザークは、ボヘミアやニューヨークで経験した別れと新たな出会いのことを新世界に籠めて作曲したのかもしれません。
春は出会いと別れの季節ですね。
今回の放送予告を知り、拙者が「新世界より」を演奏したときには感じなかったことを感じたのでした。
新世界豆知識
新世界のシンバル
「新世界より」では、しばしば極端に出番が少ない演奏者がいることがクローズアップされます。
特に有名なのは、打楽器奏者の出番が第4楽章のシンバル一発だけしかないということでしょうか。
ただ、これはオケ経験者なら理解してもらえると思いますが、第4楽章のシンバル奏者は第3楽章でトライアングルを演奏しています。
そのため、打楽器奏者の出番が第4楽章のシンバル一発だけということはありません。
実はチューバのほうが出番が少ない。
実は「新世界より」では、打楽器奏者よりもチューバ奏者のほうが出番が少ないのです。
チューバの出番は、第2楽章の最初の4小節と最後の4小節だけ、しかも、バストロンボーンとユニゾンです(;’∀’)。
出番が少ないうえにユニゾンであれば踏んだり蹴ったりです。
拙者はあまり感心しませんが、アマオケで「新世界より」を演奏するときはチューバの出番が少ないため、第4楽章の終わりくらいに金管が同じフレーズを演奏するときにチューバも演奏することがあるくらいです。
ほかにも
トランペット
第4楽章のトランペット(画像の箇所)は in c または in E 両方の演奏が存在します。
拙者が演奏した時はin Cでした。
一方、こちらの楽譜ではin Eで演奏します。
上記の楽譜の画像ではあったin Cでの記譜の記載がありません。
このパッセージは、H-Fis、G-D、どちらも普段の演奏で耳にしていることもあって違和感は少ないと推察されます。
ただ、ややこしいのは、どの楽譜を用いるのかによってではなく、その時の指揮者や演奏者によってin C or in E、どちらで演奏するかが変わることです。
拙者が演奏した時は、当時使っていたパート譜にはin C の記載はありませんでした。
このように判断に迷うときは、コンマスやコンミスではなく、マエストロ・マエストラ(指揮者)に確認をとるようにします。
余談ですが、新世界よりの楽譜は校訂や印刷ミス等が多く、研究対象にもなっているくらいです。
トランペットに関しては、第1楽章の後半にも演奏するときに判別し難いところが存在します。
コールアングレ
「家路」としても知られている第2楽章の有名なメロディは、コールアングレ(イングリッシュ・ホルン)が演奏しています。
「新世界より」での演奏でコールアングレが使われるのは、第2楽章のみです。
このためスコアでは、2番オーボエ奏者がコールアングレに持ち替えて演奏するようになっていますが、多くの場合(特にプロ)、コールアングレ奏者を別にたてて演奏することがあります。
また、1番奏者がコールアングレに持ち替えて演奏することも。
その場合、一時的に2番オーボエ奏者が1番を吹くようになります。
結び
今回放送されるのは2021年2月、埼玉県和光市で行われたブラボーオーケストラの公開収録での演奏です。
どのような演奏なのか、とても楽しみです。
ドヴォ8も執筆しました。